ゴルフ会員権の預託金返還請求

質問 私のゴルフ会員権は、ゴルフ場がオープンしてから10年経過したので、退会して2000万円の預託金を返還
   して貰おうと思うのですが返して貰えますか。


答え 全額返るのはあきらめた方がよさそうです。

1 取り返す方法は3つあります。
  1)  ゴルフ場と交渉して和解すること。
  2)  訴訟して強制執行をすること。
  3)  会員権を安く売却して、譲渡損をその他の所得と損益通算すること。

2 金額的にはどれが有効か、一慨には言えません。ゴルフ場の経営内容によると思います。3)の安く売却して一部
 を回収するのが一番経済的に有利な回収となる場合もあります。

3 ゴルフ場との和解は、裁判外でも一旦裁判を提起後でも、また判決後でもできる場合が多いと思います。
  でも、ゴルフ場の側が提示して来る条件は、会員にとって非常識と思われるようなものです。多いのは一枚の会
 員権を3枚ないし5枚に分割して会員はその全部または一部を他に転売することを認め、その代わり分割された預
 託金の返還請求期限をさらに10年間延長するというものです。中には分割した一部については現金で払い戻すと
 か、責任をもって会員権業者を紹介するというのもあります。中には預託金の5分の1で和解できるなら現金で償還
 するという会社もあります。

4 裁判を起こして、預託金全額の支払を認める判決を得て強制執行をすることは法的には可能です。ゴルフ場側は
 理事会での預託金の償還期限延長決議があったとして抵抗はしてきますが、最高裁判所の昭和61年9月11日第
 1小法廷の判例があるのでたいていは会員側に軍配が上がります。
  判決をとることはそう難しくありませんが、強制執行は困難でしょう。裁判所の執行官と一緒にゴルフ場に乗り込
 んでみますと、現金は隠されていて見つかりません(これは強制執行免脱罪という立派な犯罪で2年以下の懲役
 または50万円以下の罰金刑が課せられるおそれのある行為です)。また他の債権者が既に押さえた後だったりし
 ます。現金以外の什器備品はほとんど金にならないか、既に担保に差し入れられていて強制執行できないことが
 多いようです。
  これ以外の強制執行の方法について、アイディアがないことはないのですが、ここでの公表は差し控えます。現
 在受任している事件の解決に差し支えますので悪しからず。

5 集団的な取立方法として、破産または民事再生手続による解決があります。理屈の上では会員の方から申し立
 てることもできますが、ほとんど全てはゴルフ場側から裁判所に申し立てられます。それにしても民事再生手続は
 地方に所在のゴルフ場でも東京地方裁判所に係属することが多いのはどうしてでしょうか。ゴルフ場所在地の会員
 の意向などどうでもよい、ゴルフ場に融資をした金融機関や大株主の意向の方が大切だというのでしょうか。このH
 Pを通して東京地裁に抗議をしたいと思います。
  破産の配当率は1パーセントなんてのもあってあまり期待できませんね。民事再生手続というのは比較的多いと
 思いますが、現金の回収と言う点ではやはり破産と同様多くを望めません。ただし民事再生の弁済計画案の多く
 は退会しないでプレーする会員のゴルフ場利用権については認めていますので、会員権を投機目的ではなくプレ
 ー目的で買った人には良い手続かも知れません(破産の場合は、以後プレー権は保障されません)。裁判所から
 送られてきた再生計画案に賛成すべきか否かという相談をよく受けますが、長いものには巻かれよということか反
 対しても少数派になるということが多いようです。勿論おかしな条件と思われたら反対したり、また債権者集会に委
 任状を出さずに欠席すれば反対の意思表示をしたことにはなりますのでそうする権利はあります。仮に反対した再
 生計画案について賛成多数(債権者の過半数が委任状を含めて出席し、やはり委任状を含めて債権額の過半数
 の賛成)として可決されたとしても、その条件は反対者にも公平に適用されますので不利益はありません。ただし
 反対の結果破産となることは覚悟して下さい。

6 会員権の転売による回収は一番簡単な方法です。ただし会員権の相場が10年前に比べて、それこそいくらで売
 れるか、みなさんご存じですね。預託金の返還が危惧されるゴルフ場の会員権は相当に安くなっているはずです。
 また、多くのゴルフ場は売れ残りの会員権がある内は譲渡の名義書き換えを認めないという契約になっているよう
 です。ただそのようなゴルフ場でも会員の親族とか関係会社また特別な理由(実際はなんでも認めているようです)
 があれば第三者への名義書き換えも認めることが多いようです。応じないと訴訟を誘発するからです。

7 ゴルフ会員権を10年保有した後で売却をしますと、その譲渡益(値上がりしたとき)には26パーセントの譲渡所得
 税がかかります。会員権を購入した時から値下がりしていれば、その差額を譲渡損としてたとえば給与所得から差
 し引けば税金が安くなります。この効果は意外に大きくて、たとえば2000万円で買った会員権を200万円で売っ
 たとした場合、1800万円(銀行融資で買った場合はその利息も合わせて)を給与所得から差し引いて所得税の申
 告ができます。1年で差し引くことができなかったら翌年以降5年以内に所得から控除してよいのです。1800万円
 の所得がある人はそうとう所得税を払っているはずですが、それを払わなくてよいのですからこれは経済的にみて
 立派な回収方法といってもよいと思います。
  問題が一つあるのですが、それは預託金の償還期限が来ているゴルフ場でも名義書き換えを禁止していて流通
 価額がない会員権については、その売買価格について適正であることを税務署に対して証明しなければ損金とし
 て扱われないということです。友人のS公認会計士によると同じ会員権につき2枚以上の売買事例を証明できれば
 税務署はその価額を参考にするとのことですが、どうやってその売買事例は見つかるのでしょうか。なおこれは脱
 税となるわけではなく税務署も認める適法な節税行為です。

8 実はこの会員権譲渡による回収で極めて有効な場合があります。それは会員権を自分と関係のある会社また会
 社の場合は関係する個人に売って、プレーの名義人は従前と同じ人を指定するという方法です。従来どおりのプレ
 ーをしながら節税を同時に行うことができます。将来会員権が値上がりすることがあれば(ありますかね)、そのとき
 あらためて市場にに売りに出せばよいのです。
  詳しくはかかりつけの税理士さんに相談して下さい。

9 返還請求のタイミングですが、和解するにしても訴訟するにしても、早い方が条件はよいのは常識です。時間が
 経過すればするほど預託金の返還請求者は増えますので破産あるいは民事再生手続となる確率は高くなります。

10 返還請求の訴訟手続を弁護士に依頼したばあいどの位かかるかということですが、これは各弁護士との自由契
 約です。本年から弁護士会としては報酬基準みたいなものは独占禁止法の観点から排除することになっておりま
 す。そうは言っても皆さんはお困りでしょう。当事務所では、返還を求めるゴルフ場また当事務所と貴殿の関係(顧
 問契約があれば有利です)によって着手金と成功報酬を決めさせていただいております。極めて大雑把に言って回
 収見込み額の10パーセント程度が着手金と成功報酬の合計額と見てよいと思います。それに裁判所実費を預か
 らせていただきます。着手金と成功報酬の割合はケースごとに話し合いで決めます。民事再生手続への参加手続
 は5万円程度です。なお回収可能性の低いゴルフ場、当事務所と関係のあるゴルフ場については取り扱えない場
 合もあります。
                                  (伊達 健太郎)


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