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住宅専用マンションにおけるピアノ教室
(質問)
私の住むマンションは、ファミリータイプの住宅用マンションなのですが、最近、隣のAさんがボランティアとして定期
的にピアノを教え始めました。このため、ピアノの音で落ち着いて生活することができません。なんとかやめさせること はできないのでしょうか。
(回答)
1 ファミリータイプの住宅用マンションの場合、騒音を防止し住宅として平穏な生活を確保するため、管理規約に次
のような規定を設けることがあります。
第○条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
第○条 専有部分の居住者は、当該専有部分の使用に当たり、次の行為をしてはならない。
(1) それぞれ規約に定められた用途以外の用に供すること
(2) 住居を事務所および楽器等の教室として使用すること
(3) 楽器等を早朝(午前8時以前)および夜間(午後8時以降)他の居住者に迷惑を及ぼす演奏をすること
(4) テレビ、ラジオ、ステレオ、各種楽器等の音量を著しくあげること
区分所有者は、原則として区分所有権に基づいて、自分の専用部分を自由に使用、収益あるいは処分する権利
を有しているため、上記管理規約の規定は、専用部分の居住者の権利を一部制限するものになりますが、それぞ
れの区分所有者が、勝手な使用を行うと、騒音等が発生するなどして近隣者が快適に暮らすことができず、マンシ
ョンの共同生活全般がおびやかされることにもなりかねません。
そのため、区分所有法は「建物の管理又は使用に関し」、「区分所有者の共同の利益に反する行為」(同法第6
条第1項)は、その行為の程度により同法第57条から第60条までに定められた差止め請求などの措置を講ずるこ
とができることとしており、上記管理規約の規定は同法の趣旨に鑑みても適法であるということができます。
2 あなたの住んでいるマンションの管理規約にも同様の規定があるので、本件マンションにおいてピアノ教室を行っ
てはならないことは規約および使用細則より明らかですが、本件においては、ボランティアとしてピアノを教えている
ため、「教室」に当たるか否かが問題となります。
3 この点、教室とは、一般に「(学校で)学習や授業をする室」をいいますが、単に1回子どもに楽器を教えた場合等
まで「教室」と認定することは困難であることから、「教室」というためには、一定期間定期的かつ継続的に授業を行
っていることが必要です。
本件においては、詳細は不明ですが、「定期的」に教えているということであれば「教室」として使用しているもの
と考えられます。
また、本件においては、ピアノをボランティアで教えており対価を得ていませんが、管理規約は金銭の授受にか
かわらず住居以外の使用方法を禁じており、また、禁じられている事項は金銭の授受を前提としておらず、むしろ、
騒音の発生の有無を問題としているため、ボランティアであるという事情は「教室」であるかどうかの判断には直接
には関係ないものというべきでしょう。
4 そもそも、管理規約により専有部分を専ら住居をして使用することとし、また、楽器等の教室を行うことを禁じた趣
旨は、@マンションにおいては隣室と近接しており、居住者の行為が他の居住者に与える影響が大きいことから、
騒音を防止し、住宅として平穏な生活を確保する必要があること、A住居以外の使用方法により不特定多数の者
がマンションを訪れる可能性があり、平穏な生活が乱されることを防止する必要があることの2点にあるものと考え
られます。
とすれば、ピアノをボランティアで教える場合であっても騒音が生じ、また、不特定多数の者の出入りが行われる
可能性がある以上、金銭の授受にかかわらず、規約および使用細則に違反すると言わざるをえません。
もっとも、住居専用とする管理規約の趣旨からすれば、@ピアノを平日の日中に教えており、かつ、ピアノなどの
音が他の居住者の平穏な生活を脅かす程度に至っておらず、また、A居住者がピアノを教える相手が多数人でな
く、かつ、長期にわたって特定人である場合には、ボランティアも居住者の生活の一部であって規約の趣旨に反し
ないとして、許される場合もありうるため、騒音の程度等より具体的な事情を下に判断する必要があるようです。
具体的には、@マンションの立地条件(他の騒音の有無)、A構造、B目的外行為の態様、C目的外行為をなす
ことによって生じる住環境への影響、D目的外行為を禁じることによって生じる特定居住者の不利益の程度、E規
約制定の経緯などを総合して考慮する必要があります。
5 マンションは、その性質上、お互いが譲り合って生活しなければ他の居住者に大きな迷惑をかけることになりか
ねません。その点で非常識な楽器の使い方や規約に反する楽器教室は許されないものと言わざるを得ません。他
方で、一般に考えられる受忍限度を越えない程度の音であれば、これもまたマンションの構造上、我慢すべき場面
もあり得ます。お互いが心にゆとりをもって生活し、快適で豊かなマンションライフを楽しみましょう。
(柴田耕太郎)
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