多重リースにおける所有権の所在について


(質 問)
  私はリース会社Aにて債権管理を担当している者ですが、あるユーザーCが同一のプラント(動産)についてリー
 ス会社Bとの間でもリース契約を締結していることが判明しました。ユーザーCは、既に事実上倒産しているため
 リース会社Bとの間で所有権の争いが起こっています。私どもがリース契約を締結したのが、平成16年7月20
 日、引渡が同月21日、B社のリース契約が同月25日であった場合、いずれのリース会社が所有権を取得すること
 となるのでしょうか。

(回 答)
1 まず前提として、本件リース契約はいわゆる二重リースですが、同一物件について二重にリース契約がなされて
 いるという理由だけで契約が無効となることはありません。但し、B社が詐欺取消(民法96条)をなしうることは後
 述します。

2 リース会社間の対抗関係(民法178条)
  通常のリース契約の場合、リース会社Aは、サプライヤーCから物件を購入し、ユーザーDにリースするという形態
 を取っています。また、通常、物品の引渡しはサプライヤーCから、直接、ユーザーDへとさなれます。
  その後、本件のような二重リースのケースでは、サプライヤーCとユーザーDが共謀の上、リース会社Aとのリー
 ス契約を秘して、同一の物件につき他のリース会社Bとの間でリース契約を締結することとなるものと考えられます
 が、その前提として、リース会社BとサプライヤーCとの間で物件の売買契約が締結されます。
  したがって、物件の所有権についてのリース会社AとBとの関係は、サプライヤーCによる二重譲渡の場面ですか
 ら、対抗関係となっています(民法178条参照)。
  この点につき、民法178条は「動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗する
 ことができない」と定め、引渡の先後により優劣を決することとしている。
  本件では、リース会社AがサプライヤーCから物件を購入した際、サプライヤーCからユーザーDへと物件が引き
 渡されていますが、これをもってリース会社AはサプライヤーCから現実に引渡を受けたものと考えられることから
 (代理占有。民法181条)、リース会社AがBよりも先に引渡を受けたものと認められ、リース会社AはBに物件の
 所有権を主張することができることとなります。

3 後続のリース会社による即時取得(民法192条)
  ところで、リース会社BとしてはAに対して、「サプライヤーC及びユーザーDの占有を信じて取引を行ったのである
 から、民法192条に定める即時取得により、リース会社Bが所有権を取得した」と主張することが考えられます。
  ここで、即時取得を主張する際の要件は、
  @ 前主が当該動産を占有していたこと
  A 前主との取引行為
  B Aに基づき当該動産の占有を取得したこと
 が必要となりますが、前述のとおり本件ではリース会社BがサプライヤーCから物件を購入した際には既にリース
 会社Aに対して、物件の占有が移転しているため、要件@を欠くこととなります。
  したがって、本件において、リース会社BはAに対して、即時取得を主張することもできず、結局、リース会社Aが
 物件の所有権を対応できることとなる。

4 民法上、他人物売買も有効であるため、C及びDの行為を即違法とすることはできませんが、本件事案を全体とし
 て考察すれば、B社としては既にAに所有権があるものについて、その所有権をB社に移転することができないこと
 を知りながらあえてリース契約を締結している以上、本件C及びDの行為は詐欺に該当するということができるた
 め、民法96条により取り消すことができます。
  また、C及びDの行為は、刑事上も詐欺罪(刑法246条)に該当する可能性が高いことから、刑事告訴を行うこと
 も検討すべきでしょう。
(柴田耕太郎)

(参 照)
第192条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないとき
      は、即時にその動産について行使する権利を取得する。


トップへ
トップへ
戻る
戻る